薬と健康の豆知識

36 お酒と薬との関係について

「酒は百薬の長」という諺は、「酒を適度に飲めば、どんな良薬よりも健康に良い」ということの例えです。飲めば飲むほどよいという意味ではありません。

アルコールは、ほどよく飲めば食欲が増し、楽しい気分にもなります。しかし、飲み方を誤ると、健康を害することにもなりかねません。特にウォッカやブランデーなどの強い酒は飲み過ぎに要注意です。

過度の飲酒は、肝臓にダメージを与えるだけでなく、口腔ガンや咽頭ガン、食道ガンの発症に関係していることは、WHOの調査でも報告されています。

アルコール濃度は、酒の種類で異なります。おおよそビール5%、ウイスキー43%、焼酎25%、日本酒16.5%、ワイン12%、ブランデー43%、ウォッカ50%です。肝臓が1時間で分解できる純粋アルコール量は、7mL程度です。この程度の速さでゆっくり飲んでいると、酔いが覚めるまでの時間は五時間程度です。しかし、一気飲みをすると事情は異なります。肝臓の処理能力を超えてしまうため、急性アルコール中毒になり兼ねません。

アルコール依存症までいかないにしても、飲酒量が度を超すと、亜鉛などの微量元素の吸収が阻害されます。特に影響を受けるのは、ビタミンB1とビタミンB12の吸収です。栄養不足を補うには、酒の肴としてタンパク質の豊富な肉、魚、大豆類の摂取が効果的です、ビタミンたっぷりの緑黄色野菜も必要です、タンパク質は肝臓を守る栄養素なのです。

 

酒を大量に飲む人に良く見られるのが脂肪肝です。

適度な飲酒であれば、アルコールはHDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を高く保つ働きがありますが、アルコールの摂取が過ぎると、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積します。毎日毎日、アルコールを摂取していると次々に新たな中性脂肪が合成されることになり、肝臓で中性脂肪を処理する能力が超えてしまうために、脂肪肝となってしまいます。

 

ちょっとここで、アルコールの代謝について解説しましょう。

アルコールは、体内に入るとアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドになります。アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸となり、クエン酸回路を経て炭酸ガスと水に分解されます。脂質も同様にクエン酸回路を経て分解されます。お酒を飲みすぎると、アセトアルデヒドの分解が追いつかず、蓄積されて二日酔いになります。

 

また、酒好きな人は睡眠薬や麻酔薬が効きにくいといわれています。これはアルコール代謝酵素だけではアルコールの分解ができないときに、薬物代謝酵素が手伝うようになるためです。薬物代謝酵素は本来、薬物がからだに入ったときに働くのですが、日常的にアルコールを飲む人では、薬物代謝酵素がアルコールの処理を手伝うようになり、しかも次第に強化されていきます。アルコールを薬物の一種として認識してしまうのです。酒を飲むと強くなるというのは、この薬物代謝系がどんどん強化されていくためです。一方、アルコール代謝系は酒量が増えても強化されることはありません。

アセトアルデヒド脱水素酵素の型は遺伝子で決まっているので、お酒を飲めない人はどんなに訓練してもアセトアルデヒド酵素は増えないのです。

つまり、大酒飲みの場合、薬物代謝系が強化されており、シラフの時に薬を飲んだ場合、どんどん処理されてしまい、薬を多く飲まないと効かなくなります。このような人がアルコールを飲んだあとに薬を飲むと、アルコールの処理に薬物代謝酵素が使われてしまい、薬の代謝ができなくなってしまいます。そのため、薬の効果が増強あるいは減弱することになるのです。

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