薬と健康の豆知識

25 便秘の話

前項ではモルヒネ患者さんの便秘の話をしましたが、一般の健康な人について考えてみましょう。

さて、便秘というのは何日出ないと(排便があったか)便秘なのでしょうか?

医学書をひも解いてみても、明確な定義はなさそうですが、一般には「平常よりも便通の回数が少なくなり、排便に困難を来した状態」ということで、たとえ、1週間に1度でも正常な排便があり、健康な生活を送っていれば何も問題はない ということに落ち着きますが、通常1週間に3回未満の便通しか無いときに便秘と称しているようです。しかし、便通がないと頭痛、肌荒れ、吹き出物、イライラ感など生じ、なんだかスッキリしませんね。

多くの患者さんは1日でも便通がないと、また、力んで排便すると便秘かもしれないと心配されます。そこで、便秘を訴える患者さんとの問診の中で、ほんとうに治療が必要な便秘かを判断することが大切になります。便秘症状を詳しく聞き出すことと、便秘を起こす薬物を長期間服用していないか、現在他の病気にかかっていないか、腹痛や出血などの他の症状の有無を確認することもポイントです。

便秘のタイプには大きく分けて、弛緩性便秘と痙攣性便秘があります。弛緩性便秘には、やせ型で運動不足の女性や高齢者に多く見られます。お腹が張り、便意が弱くていつも便秘がちですが、便は太くて量は多めで、食欲不振や 頭痛、めまいなどを伴なう場合があります。このタイプの便秘には、刺激性下剤が適応となります。一方、痙攣性便秘は、若い人に多く見られ、下痢と便秘を交互に繰り返すことが あり、強い便意があるのにコロコロとして小さくて硬い便が少ししか出ず、ときには粘液便が出たりトイレに行った後も残便感があるのが特徴です。このタイプの便秘には、塩類下剤や膨張性下剤が適当となります。

では、このように一般的に使用されている(1)刺激性下剤、(2)膨張性下剤、(3)塩類下剤の成分について少々説明しましょう。

1. 刺激性下剤
刺激性下剤は腸管粘膜を刺激して、蠕動運動を亢進させることによって、排便が促進されます。ダイオウ/センナ製剤、センノシド、ピコスルファート ナトリウム等の多くの薬剤が該当します。ダイオウ/センナ製剤、センノシドの中には尿の色が赤~黄褐色に変色するものもありますが心配いりません。
2. 膨張性下剤
膨張性下剤は多量の水と共に服用すると、寒天と同じように吸収されず、腸内の水を保持して膨張することによって便量が増加し、排便が促進されます。 カルメロースが代表的な製剤で、最も生理的な排便が期待できます。
3. 塩類下剤
塩類下剤は酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウムが該当し、これらの塩類の高い浸透圧で水分を引っ張り、腸管内の水分量を増加させて便を柔らかくして、排便を促進します。

これらの緩下剤で必要なことは、安易に漫然と使用しないように注意することです。腸管に対する刺激も反復されると、だんだん腸管が麻痺して習慣性になり、大量に水分と電解質が出てしまうので、電解質のバランスが崩れて(低カリウム) しまうからです。まずは、便秘を来す病気の治療、服薬している薬の影響を考慮して、下記のような生活習慣の改善を試してみることも大事でしょう。

1. 食物繊維の摂取
1日10g以上を目標に。
2. 十分な水分の摂取
経管栄養施行中の患者さん、利尿剤服用の患者さんには特に管理が必要です。
3. 排便訓練
毎日ほぼ同時刻にトイレに行く習慣をつけてみましょう。しかし1回に10分以上は力まない方がいいでしょう。
4. 運動
ご自分の健康状態を考えた軽い運動を心がけましょう。腹部をねじったり、揉む運動は腸の動きをよくすると言われています。

しかしながら、便秘は一過性の不快な症状と見過ごさずに、硬い便が通過することによっての肛門裂傷、痔や脱肛の原因、結腸癌発生の誘因とならないように、 適切な方法で、便秘の解消に努めましょう。

最後に、高血圧症の方へのアドバイスです。排便で力んだ時には最高300mmHg程度の腹圧がかかるそうですので、高血圧気味の方は、排便時に力むと一過性に血圧が上昇することに留意して、 血圧のコントロールと併せて、排便のコントロールにも努めてください。


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