薬と健康の豆知識

24 癌患者の痛みを軽減するためには薬はどのように使われるのですか

癌の診断・治療の進歩にもかかわらず、癌は我が国の死亡原因の第1位を占めてから、10数年を経過し、毎年27万人以上の人々が亡くなっています。 この数は、減るどころか今後も増え続け、癌の告知問題とも併せて大きな課題となると思います。

癌の末期においては身体的、精神的、社会的、宗教的な苦痛が混在するといわれていますが、最も患者を苦しめるものは、強い持続性の身体的疼痛でしょう。

この痛みの治療の主軸は、非オピオイド系鎮痛剤、オピオイド系麻薬ならびに鎮痛補助薬を用いた薬による治療法です。適切な痛みのコントロールや患者さん の支えになるケアを実施することによって、癌患者さんが質的に向上した生活を楽しむことができ、結果として苦痛のない死を迎えることが目的です。

この10数年間での治療薬の進歩としては、モルヒネの使い方だと思われます。従来からの注射剤に加えて、持続性の硫酸モルヒネの錠剤、塩酸モルヒネの 坐剤が発売され、患者さんの苦痛の軽減が図られるようになりました。

もちろん、最初からモルヒネを使う必要はなく、痛みの程度によって、まずアスピリンのような非オピオイド系鎮痛剤を使い、これによって痛みが残る とか、または痛みが増強するときはコデインのような弱オピオイド系鎮痛剤が用いられます。これらの鎮痛剤でさらに痛みが残るとか、または増強するときにはじめて モルヒネのような強オピオイド系鎮痛剤が使われます。

このように痛みの程度によって、鎮痛剤の種類や投与量を段階的に変えていくことがWHOの指針として推薦されていますが、世界と比べて、日本ではその 使用量が少なく欧米の十分の一以下であるというのが現状です。

日本では今まで乱用防止のために麻薬は恐ろしいというイメージが定着しており、「モルヒネ=末期癌、依存性がある恐ろしい薬」とのイメージが先行して いるからかもしれません。

また、どのような薬にも共通して言えることですが、モルヒネにも副作用があります。

便秘、嘔気・嘔吐、眠気等ですが、それぞれの症状に応じた処置が必要となります。便秘についてですが、モルヒネには消化管の蠕動運動を低下させ、 肛門括約筋の緊張を高める作用があるため、ほとんどすべての患者さんに便秘が起こりますので、確実に予防する必要があります。通常はモルヒネ投与開始と 同時にセンノシドやセンナ製剤、ピコスルファートナトリウムを十分量で併用し、便通を記録しながら効果に応じて緩下剤の量を調整していくこととなります。

適切な便秘の管理を怠ると患者さんにとって痛みのコントロール以上の苦しみを与えてしまうことになりかねません。

最近では、入院だけではなく外来や在宅でモルヒネを使用されている患者さんが増加していることと思いますが、「有効で安全な薬」として正しく使用され、 癌性疼痛の治療成績が向上することが望まれます。


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