薬の形状と嚥下、薬の選択、薬物治療、服薬の工夫など

Q23. 薬の上手な飲ませ方について教えてください。

A23.

経口投与の場合

錠剤の場合は、ゼリーの中に埋めて飲んでいただくと良いでしょう。食後よりも食事中の方が、咽頭や食道で止まってしまっても、続いて入ってくる食物におされながら胃まで運ばれるので安心です。
粉薬を直接口に入れると、口の中に広がりむせることがあります。服薬ゼリーなどに混ぜて内服する方法があります。
錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出したりして、食事に混ぜる場合もありますが、この方法は、食べ物の味が変わってしまったりして、かえって服薬や食事をいやがられてしまう場合があります。
また、薬を取り出すとき、片麻痺などの運動機能障害があって不自由なときはあらかじめ袋に少し切り込みを入れるだけでも、服薬しやすくなります。患者さんにあった方法を工夫しましょう。

経管投与の場合

錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出したりせず、錠剤・カプセル剤をそのまま温湯に入れて崩壊・懸濁させる「簡易懸濁法」で投与すると良いでしょう。この方法は、倉田なおみ先生が報告された投与方法で、チューブが詰まらない、手間がかからないなど、多くのメリットがあります。一方で、薬剤によっては「簡易懸濁法」に適さないものもあり注意 が必要です。「簡易懸濁法」ついて詳しく知りたい方は「内服薬経管投与ハンドブック」(じほう社刊)に掲載されています。
重度の嚥下障害等で経管栄養をおこなっている患者さん以外にも応用でき、薬剤師の指導があれば家庭でもできるので、介護者の負担軽減やコンプライアンスの向上を図ることが可能です。
→倉田なおみ先生「簡易懸濁法」

嚥下障害のない普通の方でも、薬の剤形によっては飲みづらい場合もあります。どんな方でも、薬の服薬には注意が必要です。
薬を飲ませた後に口腔内を確認すると、喉頭蓋谷(舌根部と喉頭蓋の間にある窪み)や声帯の近くに薬が引っかかっていることがあります。嚥下障害の程度を考慮した剤形や適切な服薬方法が求められています。

Q24. 飲み込みやすい薬にはどんなタイプがありますか?

A24.

ゼリータイプや、小さな錠剤にしたタイプ、また水を含むと速やかに崩壊するタイプなど、飲みやすい剤形の薬が発売されています。

嚥下障害を伴った方にも、またそうでない方にも「服薬のしやすさ」を求めて多くの製剤が開発されています。
口腔内が乾燥している場合には十分に湿らせる必要があります。粘膜からは吸収されないので、唾液を飲めていることが必要です。

1.湿製錠

Adobe Flash Player を取得
湿製錠崩壊の様子(ビデオムービー)

用語解説

■湿製錠とは
口腔内崩壊錠ではありませんが、口腔内に投与すると飲水またはわずかな飲水のみで、速やかに溶ける錠剤です。
製品を含む湿潤した練合物を一定の型にはめ込んで成型した後、乾燥して製するもので、口腔内で速やかに崩壊する錠剤などの限られた用途に利用されています。
(第十六改正日本薬局方解説書製剤総則の項より抜粋)


2.口腔内崩壊錠・フィルム

Adobe Flash Player を取得
口腔内崩壊錠(OD錠)崩壊の様子(ビデオムービー)

用語解説

■口腔内崩壊錠とは
口腔内崩壊錠はOD錠とも呼ばれています。口腔内に投与すると速やかに唾液で溶ける錠剤で、水なしまたはわずかな飲水のみで、咀嚼の必要なく服用できる薬剤です。様々なタイプがあり、その製造技術によって口腔内で溶けるスピード(数秒〜30秒程度)や強度などが異なります。
OD錠内服の注意点 ~口腔乾燥があるとき、残留など~
OD錠は唾液(少量の液体)で崩壊して口腔内に広がり飲みやすくなります。しかし、口腔が乾燥していて、水分を一緒に飲まなければそのままの形でとどまったり、咽頭に送られたりします。実際OD錠が喉頭蓋谷に長期残留して困った症例もあります。錠剤が口腔や咽頭・食道に長期残留すると局所の刺激でアフターや潰瘍を形成することが問題となります。また、口腔内で崩壊したOD錠が嚥下されなければ、汚染の原因になると考えられます。アフター形成の原因になるかも知れません。OD錠であっても確実に嚥下されて口腔や咽頭に残留しないように配慮する事が必要です。

馬木良文, ほか. 口腔内崩壊錠は摂食・嚥下障害患者にとって内服しやすい剤形か?
臨床神経学 2009; 49: 90-5.
Adobe Flash Player を取得
口腔内崩壊フィルム(ODフィルム) 崩壊の様子(ビデオムービー)

用語解説

■口腔内崩壊フィルムとは
口腔内崩壊フィルムはODフィルムとも呼ばれています。製剤の表面積を大きくし、さらに薄くするすることで、唾液が迅速に製剤内部まで浸潤することができ、水なしまたはわずかな飲水のみで、咀嚼の必要なく服用できる薬剤です。

Q25. 誤嚥性肺炎の予防に効果のある薬剤などはありますか?

A25.

嚥下反射や咳反射が鈍ると誤嚥を起こしやすくなりますが、嚥下と咳の反射を司っている神経伝達物質はドパミンとサブスタンスPです。したがって、ドパミンやサブスタンスPを増やす、あるいは分解を抑制する成分は、嚥下と咳の反射を改善させ、誤嚥予防つまりは誤嚥性肺炎の予防につながるといわれています。

いくつかの薬剤とその用法・用量を紹介します。

ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤
降圧剤であるACE阻害剤には、サブスタンスPの分解を阻害する作用もあり、咳の誘発は副作用でもありますが、高齢者の誤嚥性肺炎を防止し、QOLに好影響と言われることもあります。
例)イミダプリル塩酸塩(タナトリル®など) 5mg 1錠分1
  ペリンドプリルエルブミン(コバシル®など) 4mg 1錠分1
シロスタゾール
血管拡張作用も持つ抗血小板薬シロスタゾールは、細胞内シグナル伝達系を活性化し、チロシン水酸化酵素の合成を誘導することにより、ドパミン合成を維持します。さらにサブスタンスPの産生が維持され、誤嚥予防効果も発揮します。
例)シロスタゾール(プレタール®など) 50mg 2錠分2
漢方薬
一部の漢方薬によい影響があるという報告があります。
半夏厚朴湯が誤嚥性肺炎の予防に有効であるという報告があります。
例)半夏厚朴湯 2.5g 3包分3
また、嚥下障害に有用であるといわれる他の漢方薬もあります。胃の内容物の逆流が誤嚥の原因になっているときに、有効とされる漢方薬です。
例)六君子湯 2.5g 3包分3
モサプリドクエン酸塩
消化管の動きを活発化し、胃の内容物の逆流による誤嚥を抑えます。とくに胃瘻を使用している方に有用と考えられます。
例)モサプリドクエン酸塩(モサプリドクエン酸塩錠「EE」、ガスモチン®など)
  5mg 3錠分3
アマンタジン
大脳基底核でのドパミン遊離を促進します。とくに脳血管障害を有する高齢者で肺炎の発症を抑える効果があるとされています。
例)アマンタジン(シンメトレル®など)50mg 3錠分3


このようなものもあります。

カプサイシン
トウガラシなどに含まれるカプサイシンは、咽頭や下気道に分布する無髄の知覚神経であるC線維末端を刺激し、神経末端に貯蔵されていたサブスタンスPなどを含むタキキニンを遊離させ、咳を誘発します。
例)カプサイシン入りフィルム状食品(カプサイシンプラス®など)
葉酸
緑黄色野菜などに含まれる葉酸は、消化吸収能が低下した高齢者では欠乏しやすいとされています。葉酸は、ドパミンなどの神経伝達物質の合成に重要な役割を果たすことから、嚥下・咳反射の改善にも良いとされています。

これらは一例で、実際には患者さんの年齢や状態等により薬の投与量や使用方法は異なります。
実際の臨床では、くすりのみでは嚥下障害の解決にならないこともあります。

Ebihara T, et al. Capsaicin troche for swallowing dysfunction in older people.
J Am Geriatr Soc 2005; 53: 824-8.

薬の副作用として嚥下障害が起こることを、「薬剤性嚥下障害」といいます。
薬剤性嚥下障害には、次のような症状と、その原因となる薬などが報告されています。
Stoshus B, Allescher H-D. Dysphagia 1993; 8: 154-9.

  • 平滑筋や骨格筋の機能障害
    抗コリン剤、三環系抗うつ剤、テオフィリン、カルシウム拮抗薬、アルコール
  • 下食道括約筋(食道-胃部分)の圧低下
    プロゲステロン、グルカゴン、ドパミン、テオフィリン、カルシウム拮抗薬、アルコール、アトロピン、ブチルスコポラミン
  • 口腔咽頭および食道の嚥下機能低下
    中枢神経系の鎮静作用を有する薬剤
  • 咽頭の筋肉麻痺
    痙性斜頸や顔面神経麻痺時のボツリヌス毒素の局所投与
  • 麻痺による嚥下障害
    経管チューブ挿入、内視鏡検査、歯科治療に用いられる局所麻酔
  • 口腔乾燥症から嚥下障害
    抗ヒスタミン剤、降圧薬、抗不整脈薬

ページのトップへ戻る