在宅ケアについて

Q10. 在宅ケアの注意点を教えてください。

A10.

肺炎や脱水・低栄養の徴候を早期に発見しなければいけません。

  • 元気のなさ
  • 食欲低下と体重減少 (低栄養)
  • 皮膚の張りのなさ、口腔乾燥、尿量低下 (脱水)
  • 摂食中や摂食後のむせと咳
  • 痰の量や性状
  • 発熱 (誤嚥性肺炎の疑い)
  • 歯科的観察 (口腔内汚染、大量の歯石、歯痛、歯肉の腫れ、入れ歯の不具合、残存歯の状態など)

これらの確認を常に心がけ、少しでも疑いや異常があれば、かかりつけの医師や病院に連絡しましょう。

在宅での摂食が困難と思われる次のような場合は、
早急に解決法を専門の医師等にご相談ください。

  1. 本人が食べたくない・食べようとしない・口にため込んで飲み込んでくれない
  2. むせがひどくてどうしてよいか分からない
  3. 誤嚥性肺炎を繰り返している
  4. 嚥下障害を見てくれるかかりつけの先生がいない
  5. 本人に「食べたい」という意志があっても、介護者(家族)に意欲、理解力、介護力がない
  6. 家族が「食べさせたい」と思っても、本人に理解力がなく、介護に抵抗したり、食べるときの姿勢や適切な食べ物、食べ方などの注意点が守れない

Q11. 口腔衛生と肺炎には、関係がありますか?

A11.

摂食嚥下障害のある方は、唾液の分泌低下や唾液による自浄作用の低下、それに伴う食物の残留などで口腔内細菌が増殖し、口腔内が不衛生になると、誤嚥性肺炎につながる可能性が高まります。

摂食嚥下障害の患者さんは、咀嚼(そしゃく)や嚥下に必要な運動、あるいは感覚が低下しているので、口腔や咽頭が汚染され、汚い分泌物を誤嚥することにより細菌が肺に入り、誤嚥性肺炎につながる危険性があります。特に就寝前の口腔ケアが不十分な場合は、不顕性誤嚥による肺炎の可能性が高まります。

全国11介護施設の利用者約400人を対象にした誤嚥性肺炎の発症率調査では、食後の歯磨きとうがい、定期的な歯科医らのケアをしたグループの発症率は11%、しなかったグループは約2倍の19%でした。

佐々木英忠,ほか. 口腔・咽頭の機能低下と誤嚥性肺炎. 厚生省厚生科学研究費補助金
長寿科学総合研究 平成6年報告書; 4: 140-6.

日頃からの口腔内ケアは嚥下の訓練にもなり、肺炎の予防につながります。

Q12 口腔ケアにはどんな効果がありますか?

A12.

誤嚥性肺炎の危険性が下がるほか、嚥下機能そのものにも好影響を与えます。さらに、認知症の予防にも効果があるといわれています。

上で述べたとおり口腔ケアで口の中を清潔にしておくと、誤嚥性肺炎の予防にたいへん役に立ちます。嚥下反射の改善効果もあり、嚥下機能が改善します。口腔ケアは、嚥下障害のある方はもちろん、あらゆる高齢者の方にとって、たいへん重要です。

●誤嚥性肺炎の発症率軽減

Yoshino A, et al. Daily oral care and risk factors for pneumonia among elderly nursing home patients. JAMA 2001; 286: 2235-6.

●咳反射の改善効果

Watando A, et al. Oral care and cough reflex sensitivity in elderly nursing home patients. Chest 2004; 126: 1066-70.

●認知症予防

Kikutani T, et al. Effect of oral care on cognitive function in patients with dementia. Geriatr Gerontol Int 2010; 10: 327-8.

Q13. 家庭でできる口腔ケア方法を教えてください。

A13.

毎食後、ブラッシングと口腔清拭(こうくうせいしき)を行います。これらは歯、歯肉、口腔粘膜のマッサージ効果もあり、機械的刺激による口腔機能の回復に期待ができます。

【方法】

  1. 口腔内の残渣(ざんさ:食べ物の残りかす)の点検と清掃
    「摂食嚥下障害」のある方では、ほお・唇と歯茎の間に残渣があることがあります。人差し指にガーゼを巻き付け、奥から前へ拭い取ります。口腔内用スポンジブラシの使用も有用です。

     

  2. ブラッシング
    磨きやすいヘッドが小さめの歯ブラシを用い、水気をよくきって小刻みに動かしながら歯の汚れをとります。歯茎や歯のつけ根もしっかり磨きましょう。
    ブラシに付いた汚れは頻繁に洗い流し、適宜うがいをして口腔内は常に清潔に保ちます。うがいができない方は、余分な水分をガーゼや吸引機で吸いとり、ブラッシング時の水分による誤嚥を防ぎます。
    粘膜が弱い方には、ソフトなナイロン製のブラシを使用します。豚毛のような密な植毛のブラシは、使用後にブラシの内部が乾燥しにくく、細菌が繁殖しやすいので清潔面に十分注意して保管しましょう。

    ブラッシング
     

  3. 口腔清拭、口腔粘膜ケア
    歯がある方もない方も、「歯磨き」ならぬ「口磨き」は必要です。ガーゼやスポンジブラシ等を水で濡らして、余分な水気をきって使用し、口腔内を清拭します。頬内側の清掃の場合は、奥から前へ拭き取ります。

    口腔ケア方法
    【準備するもの】
    • 口腔ケア用スポンジブラシ
      市販されているもの(口腔ケア用スポンジブラシ(トゥースエッテ®など))、
      または歯ブラシにガーゼを巻いたもの。
    • 水200cc、
      またはカテキン水
      (水にカテキン粉末0.25g(耳かき5杯分))
    • 紙ナプキン、
      またはキッチンペーパー

    1. 水またはカテキン水に、スポンジブラシを浸す。
    2. 紙ナプキン、またはティッシュペーパーで、
      スポンジブラシが含んだ水分が垂れ落ちない程度に
      水分を吸い取る。
    3. 図の点線のように、歯と頬の間と舌の下の汚れを拭き取る。正中には、唇小帯があるので、正中の手前までで止める。
    4. 口蓋は、正中を奥から手前へ、また左右へもしっかりこすって拭き取る。
    5. 図の点線のように、歯肉と頬粘膜の間もしっかり拭き取る。正中には唇小帯があるので、傷つけないように正中で止める。
  4. 舌の清掃法
    舌の汚れを落とします。舌ブラシや歯ブラシなどを使って舌の奥から前へ軽く数回に分けて拭き取ります。介護者の人差し指に巻き付けたガーゼでやさしく拭き取る方法もあります。

    舌の清掃法:スポンジブラシを回しながら拭き取る。

  5. 姿勢について
    可能であれば座位をとります。円背などで座位が不可能であれば横になったりして顔を横に向け、唾液がのどに流れ込まないように、患者さんにとって無理のない自然な姿勢を考えます。

口腔内を清潔に保つことは、味覚や触覚(食品のかたさ、温度、味)を鋭敏にし、食べる意欲を引き出す意味でも重要なことです。食べる意欲がでれば、脳が活性化し、食べる楽しみを感じる事ができます。

Q14. 入れ歯の方にはどんな注意が必要ですか?

A14.

特に義歯の清掃と、歯科治療について、大切なことを以下に記します。

義歯の清掃

食後歯を磨くのと同じように、義歯は毎食後掃除します。
義歯を外して歯ブラシで機械的にバイオフィルムを除去・清掃し、そのあと義歯用洗浄剤を併用するとより効果的です。口腔内の清掃も必ず行ってください。

注意:次亜塩素酸系の洗浄剤は義歯の金属腐食を招くので注意が必要です。
   洗浄剤の説明書をよく読んでから使用してください。

※バイオフィルム:台所やお風呂などの表面につくヌルヌルした部分で、細菌が菌体外多糖という物を作る非常に取りにくい膜のことで、膜の下は細菌の塊となっています。義歯表面や口腔粘膜にもでき、ブラシなどで機械的に除去する必要があります。

歯科治療

健常歯列の方に対し、ブリッジの方の咀嚼効率は平均 66.5%、総義歯の方では約 20%と言われています。喪失歯がある、または義歯に痛みや不具合があるなどの場合は、咀嚼率はさらに低下し、ほとんど咀嚼できていないと考えます。嚥下を促す義歯や安定した咬合が 摂食嚥下の動きをスムーズにするという報告があり、歯科治療は摂食嚥下機能を促す役目を担っていると考えられます。
Tamura F, Mizukami M, et al. Analysis of feeding function and jaw stability in bedridden elderly. Dysphagia 2002; 17: 235-41.

現在では脳血管疾患でも早期の歯科治療や口腔ケアの必要性があると言われています。細菌の巣である歯垢や歯石の除去は口腔内衛生管理には大変効果的で、肺炎防止にもつながります。
介護者が日頃から口腔内ケアに注意を払い、歯科治療が必要な場合は、すぐに歯科医に相談しましょう。半年に1回の専門科によるチェックが必要といわれています。

Q15. いつまで訓練が必要ですか、いつになったら普通に食べられますか?

A15.

嚥下障害の種類、程度、原因となっている病気や嚥下障害の経過など、患者さんは 一人ひとり状況が異なります。若い人や程度の軽い人では元通りに改善して普通食が食べられるようになり、訓練も不要となる場合もあります。しかし、重度の障害や高齢者では元通りにまで改善せず継続的な訓練が必要な場合もあります。

訓練方法や訓練期間は、嚥下障害の種類や程度、病気や嚥下障害の経過、患者さんの全身状態など、さまざまな要因を考慮して、一人ひとりの患者さんに最適な訓練方法が提供されます。食事の形態や食べる時の姿勢なども同じです。したがって、訓練方法や訓練期間、食事の条件などについて気になる事があれば、担当の医師やスタッフに遠慮せず相談しましょう。
ただし、口腔ケアなどは嚥下の訓練になるだけでなく、肺炎の予防にもなりますので、障害がなくても続けるように心がけましょう。

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