摂食嚥下障害の症状

Q1. 摂食嚥下障害には、どのような症状がありますか?

A1.

摂食嚥下障害には、次のような症状が見られます。

  • 食事中によくむせる
    (とくに水分でむせることが多く、みそ汁などを避けるようになる)
  • 食事中でなくても突然むせる、咳込む(唾液でむせているもの)
  • 飲み込んだ後も、口腔内に食物が残っている
  • ご飯より麺類を好むようになったり、咀嚼(そしゃく)力低下や歯科的問題で、
    噛まなくてよいものを好むようになる
  • 食事の後、がらがら声になる
  • 食べるとすぐ疲れて、全部食べられない
  • 体重が徐々に減ってきた
  • 毎日飲んでいた薬を飲みたがらない
  • 水分をとりたがらない(尿量が減った)
  • 発熱を繰り返す(誤嚥性肺炎の疑い)
  • 夜間、咳込むことがある

これらの症状は、病気で身体が弱っている方や、ご高齢の方、また脳卒中などの後遺症がある患者さんなどで見られることがあり、摂食嚥下障害の可能性が考えられます。
家族や介護者はこれらの症状を見逃さないよう注意しましょう。

→詳しくは、Q7へ

「嚥下」とは厳密にいえば咀嚼したあとの食品(食塊)をまさに飲み込むだけのことを指します。上手く飲み込めなければ嚥下障害があることになります。しかし、最近は嚥下障害という用語は、広い意味での摂食嚥下障害、つまり「食物を認識してから口に運び、取りこんで咀嚼して飲み込むまでの障害」として使われています。

Q2. 誤嚥性肺炎について教えてください。

A2.

食べ物が食道ではなく気管に入ってしまった場合、通常はむせて気管から排出する反射機能が働きます。しかし、この機能が鈍ってしまうと、気管に入り込んでしまった食べ物を排出できず、結果として肺炎を起こすことがあります。このように、食べ物や唾液などが、気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といい、誤嚥が原因で起こる肺炎を誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)といいます。

Q3. 誤嚥性肺炎の症状と発見方法は?

A3.

誤嚥性肺炎には、次のような典型的な症状があります。

  • 発熱
  • 激しい咳と膿性痰(のうせいたん=黄色いタン)が出る
  • 呼吸が苦しい
  • 肺雑音がある

これらは風邪と間違えて診断されてしまうことがあり、特に高齢者でこのような症状がある場合は誤嚥性肺炎の可能性を考える必要があります。これらに加えて炎症反応(CRP上昇、白血球増多など)と胸部レントゲン写真で肺炎像があることで診断されます。

また高齢者の場合は普段の生活で、肺炎とは無関係のような次の症状が見られる場合でも、肺炎の可能性があります。

  • 元気がない
  • 食事時間が長くなる
  • 食後に疲れてぐったりする
  • ぼーっとしていることが多い
  • 失禁するようになった
  • 口の中に食べ物をため込んで飲み込まない
  • 体重が徐々に減ってきた
  • 夜間に咳込む

日常生活の変化に気をつけ、これらの兆候がみられたら、すぐにかかりつけの医師や病院に相談することが、誤嚥性肺炎の発見につながります。

用語解説

※CRPとは
体内で炎症反応や組織破壊が起きているときに血中に現れるタンパク質のことです。嚥下障害のある患者さんでは、肺炎を起こすと上昇し、また治癒とともに下がるので、肺炎の診断や治療効果の判定に役立ちます。

Q4. 食べていなくても誤嚥性の肺炎になりますか?

A4.

口を使わず、胃に直接チューブを入れて栄養物を送り込む(経管栄養)状態の方でも、誤嚥性肺炎になることがあります。睡眠中などに、唾液や異物が気管に入り(不顕性誤嚥)、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。

食べないで口を使わないと、唾液の分泌が減り、また鼻腔・咽頭からの分泌物も嚥下されにくいため、口腔や咽頭は食べているとき以上に汚染し細菌が繁殖しやすくなります。夜間そのような分泌物を誤嚥したり、胃からの栄養物が逆流して誤嚥したりすると、肺炎を起こしやすくなります。高齢者では気道の喀出(かくしゅつ)機能や嚥下反射が弱く、誤嚥したものを排出しにくくなり、また全身の体力や抵抗力も弱っているので肺炎を起こしやすくなります。

通常では誤嚥するとむせますが、むせなかったり、睡眠中に無自覚に唾液や鼻腔粘液が呼吸にともなって、少しずつ気道に入っていく現象がおこります。このように本人の無意識のうちに唾液などが気管に入ってしまうことを、不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)といいます。

嚥下反射・咳反射の低下した老人の場合、睡眠中には約70%の方に「不顕性の誤嚥」がみられ、この不顕性誤嚥を繰り返すうちに肺炎を起こしてしまうという誤嚥性肺炎が多いため、老人性肺炎予防の日常的なケアとして「十分な口腔ケア」が大切です。

佐々木英忠,ほか. 口腔・咽頭の機能低下と誤嚥性肺炎. 厚生省厚生科学研究費補助金
長寿科学総合研究 平成6年報告書; 4: 140-6.

Q5. 不顕性誤嚥の対策について教えて下さい。

A5.

通常は誤嚥するとむせると考えますが、誤嚥してもむせなかったり呼吸苦が起こらないなど誤嚥の徴候が捉えられないこともあり、これを不顕性誤嚥といいます。健常者でも睡眠中に無自覚に唾液などを誤嚥しているとされています。→詳しくは、Q4へ
十分な口腔ケアはきわめて大切です。口の中の常在細菌量を減らすことにより、不顕性誤嚥による肺炎の発症を抑えることができます。

嚥下障害の原因となる薬剤(睡眠剤や鎮静剤など)を内服していれば、減量や中止を検討します。栄養状態や脱水の改善、日中の活動性を上げたり身体リハビリを積極的に行うなど、肺炎になりにくい体を普段から作っておくことも重要です。胃食道逆流による誤嚥が疑われるときは、食後1~2時間は横にならないようにしたり、就寝時に上半身を軽度挙上しておくと効果があります。肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの実施は、肺炎の発症を抑えたり、肺炎が重症化するのを防ぐと言われています。誤嚥性肺炎の予防効果がある薬剤も検討します。

→詳しくは、Q25へ

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